お祭り騒ぎが大好きな人間が集まる国、スペインでの屋外パエリア・パーティ【前編】

〜食前酒、オードブル編〜



「スペインで何を食べたい?」

定番の質問に殆どの皆さんが(よっぽどのスペイン・マニアでない限り)こう答えます。

「スペインに行ったら、パエリアを食べたい。」

日本人に限らず、世界中の観光客がスペインを訪れた際に必ず食べる、食べたいと思う料理が「パエリア」。日本と言えば「寿司」、スペインと言えば「パエリア」、それくらい国際的に有名で人気のある食べ物です。

そんな「パエリア」は日本の「寿司」のような存在であると同時に、「カレー」のような存在でもあります。皆でワイワイとキャンプ場で作ったり、素材の具や隠し味にこだわって自分だけのオリジナルの味を求めたり。外国人観光客がレストランで食べる「パエリア」は、お値段も雰囲気も高級です。でもスペイン人が日頃食べている「パエリア」は、もっと庶民的で気取りの無い、お袋の味を代表する家庭料理なのです。今回はそんな「パエリア」を食べる会、屋外パエリア・パーティを取材して来ました。

スペイン人は集合するのが大好きです。人が多ければ多いほど楽しい、と思うタイプの人間が多いし、基本的に一人行動が苦手です。だから何かしらの集まりがある、との情報を耳にすれば、友達を誘って一緒に出かけます。「友達の友達が、友達の友達のパーティに行くんだけど一緒に行かない?」なんて誘いも多く、一体誰の、何のパーティなのか分からないまま、冷静に考えれば誘ってきた友人でさえ全く繋がりの無い人達のパーティに参加することになります。

今回の屋外パエリア・パーティも、最初は数人の仲良しグループで企画されていました。でも彼らの友達の友達の友達ぐらいまでの範囲が参加する事になり、最終的には50人近くの大所帯となりました。



ここバルセロナは、スペインの他のどの都市よりも外国人が多く住んでいます。都会で、海があって、山があって、気候が良くて、住みやすい。そんなパラダイスのようなバルセロナは何時だって多くの外国人を魅了してきました。だから今回のパーティもスペインに限らず、イギリス、アメリカ、コスタリカ、メキシコ、ブラジル、ペルー、チリ、アルゼンチン、スウェーデン、ノルウェー、ポーランド、ロシア、ドイツ、フランス、イタリア、ポルトガル、中国そして日本と、まさに色々な国籍の人達が参加して、インターナショナルな街バルセロナらしい国際色豊かなパーティとなりました。集まった全ての人達が観光客では無く、スペインで普通に暮らしている外国人達なので共通語はスペイン語です。でも国によって独特のアクセントがあります。最近では彼らの話すスペイン語を聞くだけで、だいたい何処の国出身なのか感知出来るようになりました。

お祭り騒ぎが大好きだからスペインに住んでいるのか、周りのスペイン人に感化されてお祭り騒ぎ好きになったのか、賑やかを通り越してウルサイぐらいの団体でした。もう本当に皆、喋る喋る。



昔は土地が安かったからなのか、スペイン人はセカンド・ハウスを持つ人が多いです。平日は学校や職場に近い都市の家で過ごし、週末となれば海や山の近くの家で過ごすのです。またトマト、ピーマンなどの野菜を栽培したり、鶏や豚を飼育する土地を郊外に購入し、週末はそこで畑仕事をするのが生きがい、なんて人達も沢山居ます。このタイプの人達が購入する土地は、バカンス気分が満喫出来るような海や山、観光地の近くではなく、ただただ農地が広がっているような面白みの無い辺鄙な場所。一番大切なのは自分の住んでいる家から車で簡単にアクセスが出来る事だからです。

バカンス気分で訪れる為に買った土地ではないので、敷地内にはシンプルな小屋を建てます。トイレを作り、訪れた際に自分の畑で収穫した新鮮な食材を使って料理出来るようなキッチンを作ります。ご飯を食べた後にウトウトとお昼寝する用のソファーやテレビを置き、子供達にせがまれて畑の一角にプールを作る人なんかもいます。



今回のパーティもそんなミニ農園で開催されました。オーガナイザーの友達の友達が所有する、バルセロナから車で30分位の場所です。お礼として一人2ユーロずつ所有者に支払う事にしました。シンプルな小屋、と言っても使い勝手の良いキッチン、調理道具一式、冷蔵庫に巨大な冷凍庫、小屋の外には大人数のパーティでも問題無い大きなテーブルと椅子、子供達が遊べるブランコや滑り台などがあります。テーブルの傍の2本の木にはスピーカーがぶら下がり、食後のダンスタイムにも対応する至れり尽くせりなパーティ会場です。

集合は土曜日の12時。スペインでは午後2時に昼ごはんを食べます。金曜日、土曜日の週末ともなれば明け方近くまで遊んでいる宵っ張りが多いので、週末のお昼ご飯は更にもっと遅くなります。今回のパーティは「働かざるもの食うべからず」がコンセプトなので集合は12時、参加者全員で食事の準備をします。



今回のパーティのオーガナイザーは、若いスペイン人のカップル。事前に一人1300円位の会費を彼らに支払います。彼らがメニューを考え、会費から食材や必要な物を揃えます。農園所有者へのお礼も会費でまかないます。今回のメニューは食前酒、6種類のオードブル、3種類のサラダ、2種類のパエリア、デザートとカクテル。

オーガナイザーの指示で適当に班分けされ、食事作りに取りかかります。飲み物・サラダ班、オードブル班、パエリア班、デザート班に分かれての作業開始です。この時点で既に冷たいビールが出回っているので、良い気分になりながら手よりも口の方が活発な食事作りを楽しみます。

オードブルは全部で5種類。


スライスしたフランスパンの上に、スペインを代表する羊のチーズ、マンチェゴ・チーズとカリンのジャムをのせ、胡桃をトッピングしたもの。スペインの定番オツマミで、ワインにもビールにも合います。


クリームチーズにレーズンを混ぜ、ラム酒で味を整え、椰子の実をトッピングしたもの。最近流行りのパーティレシピで、赤ワインとの相性が最高です。


イベリコ豚のパテの上に細かく切った生ハムをトッピングしたもの。スペイン王道のオツマミです。


食パンをトーストし、カニかまぼこ、ゆで卵をミキサーにかけマヨネーズで合えたものを挟んだミニ・サンドウィッチ。特に子供達に人気のレシピ。


アンチョビ、黒オリーブ、赤ピーマン、缶詰のツナをミキサーにかけ、塩、コショウ、オリーブオイルで味を整えたもの。今回一番のお気に入りレシピです。


カニカマボコをニンニク入りアリオリソースで和えたもの。手作りのアリオリ・ソースはパンにソースだけでもOKな美味しさ。


ワイワイ、ガヤガヤ賑やかな雰囲気の中、50人分のオードブルが次々に出来上がっていきます。



スペインを代表する食べ物が「パエリア」ならば、スペインを代表する飲み物は何でしょうか。ちょっと悩みますが、観光客が良くレストランで飲んでいる「サングリア」ではないでしょうか。「サングリア」とはフルーツが沢山入った赤ワインのこと。作る人によってレシピが違うのですが、フルーツ以外に炭酸水や他のリコールを混ぜる事が多いです。甘くて飲みやすいので、ついつい油断して飲み過ぎてしまうのですが、色々なお酒がチャンポンされている事が多いので悪酔いをしやすいです。次の日の朝、本当に辛い思いをするので、スペインで「サングリア」を飲む時は、見かけと味に騙される事のないよう注意して、程々に飲みましょう。



外国人観光客用レストランでは、バカンス気分を盛り上げるようなオシャレなガラスの器で「サングリア」を作る事が多いです。しかし今回は50人分の「サングリア」を作るので、100円ショップで購入したプラスチックの洗濯桶を使います。まずはリンゴ、バナナ、桃、洋ナシなどの果物を小さく切ります。それを洗濯桶に次々と投げ入れて、赤ワインをそそぎます。「サングリア」を作るのに、高いワインを使ってはいけません。安いワインをどれだけ美味しく飲ませるかが「サングリア」の基本精神だからです。今回も紙パックで売っている、1リットル100円程度の料理酒レベル安ワイン。そして5リットルのプラスチック容器に入った業務用お徳ワインを使いました。このような安ワインは、そのままで飲むと何だかとっても薄っぺらい味がします。だから色々なモノを付け足して、ワインの味に深みとコクを出すのです。各地方、各人によってアレンジが違うのですが、今回の「サングリア」担当者はファンタ・オレンジ、ファンタ・レモンを入れて甘さと微炭酸を演出。更には前回のパーティで飲み残したロン、ウィスキーなどのお酒のボトルを手当たり次第、そして大胆に足していったので、アルコール度数のかなり高い、大変危険な飲み物と化していました。果物の味がワインに染み込むまで少し寝かせれば完成です。


(後編に続く)


取材:市川路美