高級タイ料理「Oth Sombath」のシェフに会いに

〜タイ料理とフランス料理、見事なフュージョンの世界〜


世界中のおいしい料理が楽しめるパリ。中でも、私たちにとってもなじみの深いアジア料理の人気は目を見張るものがあり、庶民的なものから高級なものまで、さまざまなスタイルのレストランが出現し続けています。今回は、フレンチのエスプリを散りばめた芸術的なタイ料理を創り続ける、パリ8区の「Oth Sombath」(オット・ソンバット)を訪れました。


Oth Sombath(オット・ソンバット)氏

★本日のシェフ

Oth Sombath(オット・ソンバット)氏

南仏サントロペ、ロンドン、ブリュッセル、コペンハーゲンでも腕をふるった経験のあるタイ人シェフ、Oth Sombath(オット・ソンバット)氏。2008年には、シャンゼリゼ通りにほど近い、フォーブール・サントノレ通りの一等地にご自身の名前を冠したレストランをオープン。今日は、生まれ育った国を飛び立って30年以上というソンバット氏にお話を伺い、料理をご披露いただきます。


◆祖国を飛び立った、15歳の少年

もともとは、料理ではなくメカに興味があったというソンバット氏。祖国タイを出て、初めてヨーロッパの地を踏んだのは、少年だった15歳のころ。ことばも文化も全く違うヨーロッパ、学業もおぼつかず、あまりにも毎日がつらいことばかりで、特に最初の半年間はタイに帰りたくて仕方がなかったそう。無理もありません、当時はまだまだ幼い15歳!


◆料理との出合い

ブリュッセルにいた18歳のとき、生活費のためにレストランでアルバイトを始めたのが料理との出合い。皿洗いや野菜の皮むきから始まり、少しずつ調理にも携わるように。ただ、当時は料理の楽しさが全く分からず、「生活のために」必死に働く日々だったとソンバット氏は振り返ります。


◆ヨーロッパ中を駆けめぐる生活

ところが、数年後から気持ちに変化が現れはじめます。レストランの現場で本格的にタイ料理を習っていくうちに、祖国タイの料理を作ることが楽しくなってきたのです。料理を作る魅力にとりつかれてからは、目まぐるしい勢いでヨーロッパ中を駆けめぐる日々が待ち受けていました。88年には、ロンドンでのタイレストラン新規オープンのシェフとして抜擢、翌年89年には、ブリュッセルで働いていたレストランと同グループのコペンハーゲンのレストランに引き抜かれ、91年にはパリへ。その後、南仏サントロペに移り、4つ星ホテル内にOth Somathの名でレストランをオープン。そして、2008年、パリにも、Oth Sombathを構えることになります。


◆国が変わるたびの困難

一見、誰もがうらやむ華やかなヨーロッパ生活と思いきや、「同じヨーロッパといえども、国が変わるたびに困難に遭遇し、苦労は尽きなかった」というソンバット氏。やっと慣れてきたと思ったころには次の国へ・・・の生活は楽なものではありませんでした。現在の場所にレストランをオープンするにあたっても、2005年に物件を購入したにも関わらず、2008年のオープンまでに実に丸3年以上の年月を費やしました。もともとはレストランではなかった場所だったこともあり、思った以上に行政上の手続きや工事で時間がかかったのです。一筋縄でいかないフランス。気の遠くなるような膨大な手続きを無事に終えるまでは、ストレスだらけの毎日だったとか。けれども、「目標や夢があるのなら、最後まであきらめてはいけない。投げ出してはいけない。あきらめたら、決して目標や夢にはたどり着けない」とソンバット氏。成功の裏には、計り知れない苦労があるのです。

それでは、そろそろお料理を拝見しましょう。Oth Sombathの世界をたっぷり堪能ください。


◆美しきフュージョン料理

こちらは、前菜として選べる、海老とホタテ貝のデュオ。シブレットとマッシュルームのパンケーキに、ぷりんとした海老とホタテ貝がのった一品です。ソースはタイのスパイスを使い、ほんのり辛く、酸味もあります。海の幸との相性はばっちり。「タイ料理?フランス料理?」・・・そう、これがソンバット氏の世界。見事なフュージョン!


さて、こちらはレモン風味のマッシュルームスープ。ソンバット氏の考案で、実はオレンジジュースが隠し味に入っているのだそう。ココナッツミルクでクリーミーな仕上がりですが、お味は予想以上にスパイシーで濃い目。レモングラスやコリアンダーがしっかりときいています。マッシュルームはもちろんのこと、細かく刻まれたキクラゲがたっぷりで、コリコリした食感がやみつきになりそう!


Oth Sombathに来るからには、得意の魚料理をメインとしていただきたいところ。この蒸しスズキのライムソースはレストランいち押しの一品です。斬新な盛りつけで登場のスズキは、スパイシーなライムソースを少しずつ絡めてどうぞ。中に入っている白菜とのハーモニーも抜群です。フランス料理でいただく魚よりも食欲が湧く気がするのは、やはり慣れ親しんだアジアの味だから !?もう一品のご自慢の魚料理、鯛のグリルもおすすめ。こちらはバナナの葉に包まれてサーブされ、にんにく、レモングラス、コリアンダーの味と香りがたまりません。



内装デザインを手がけているのは、パトリック・ジュアン氏。3つ星レストラン「アラン・デュカス」、レンタル自転車ヴェリブ、リール駅舎なども彼のデザインで、いまやフランスを代表するデザイナーの一人です。モダンでシックなヨーロッパを感じる店内で、フランス料理のエスプリを織り交ぜたオリジナリティあふれるタイ料理をいただくのは、新鮮で贅沢なひととき!


日々のメニュー開発にも余念のないソンバット氏の毎日は、多忙を極めます。寝る間を惜しんでの研究から生み出される、数々のすばらしい味。今後の「ソンバット料理」からも目が離せそうにもありません。最後には「そうだな、次は東京にもレストランをオープンできればいいなと思っているよ」と笑顔で締めくくってくれました。いつか東京でも、同じ名前のレストランを見る日が来るかもしれませんね。フランス料理界の偉大なシェフ、ギ・サヴォア氏もよく訪れるというOth Sombath、ぜひ一度、足を運んでみて!


★Oth Sombath(オット・ソンバット)

184 rue du Faubourg St-Honoré

75008 Paris

Tél : 01 42 56 55 55

営業時間 : 12:00~14:45、19:30~23:00

定休日 : 日

最寄メトロ : 9号線St-Philippe-du-Roule

Web : www.othsombath.com


文: 内田ちはる
写真: 新村真理