Café Tolo(カフェ トロ)

~バスク出身のマダムが営むバスク料理のカフェ~



ここ数年、日本の雑誌やテレビでも目にすることが多くなった「バスク料理」。歴史的、民族的、文化的に見たバスク地方とは、フランスとスペインの国境をはさんで広がる一帯のことで、バスク国とも呼ばれます。ここに住む人々が、バスク人。16世紀から17世紀にかけ、バスク国が南北に分かれてスペイン領、フランス領となってからも、スペインでもなくフランスでもなく、バスク独自の言語と文化を育んできました。そして、このバスク国に住むバスク人によって発展してきたのが、バスク料理と呼ばれるものなのです。

今日は、パリでバスク料理が気軽に楽しめるカフェを訪れてみることにしました。


映画「アメリ」で有名になったサンマルタン運河のほど近く、Café Tolo(カフェ・トロ)。店内は、白と木のナチュラルカラーを基調にコージィでポップ、ひとりでも入りやすい雰囲気。ランチタイムには12.5ユーロ(2品)と15.5ユーロ(3品)の日替わりコースが用意されていて、お財布に優しいと近辺の会社員たちにも評判です。もちろん、コスト面でもボリューム面でも満足のこれらのコースもおすすめですが、こちらを訪れたらぜひ試していただきたいのは、アラカルトでチョイスできるバスク料理。このカフェを営むマダムがバスク出身で、アラカルトメニューには魅力的な家庭的バスク料理が並んでいるからです。


どのバスク料理にするべきかと悩んでいる取材チームのテーブルに、カフェの気さくなマダムがアドバイスしに来てくれました。バスク料理についていろいろ質問していると、見せてくれたのは、バスク地方を代表する伝統的な微発砲ワインのチャコリ。アルコール度やや低めの、辛口白ワインです。チャコリならではの酸味が、魚料理と相性抜群なのだそう。またバスク地方では、ワインも水も、「ボデガ」という、ずん胴フォルムのコップでサーブするのだと教えてくれました。周りのテーブルを見渡せば、確かに、ワインも水もみな同じボデガ!ボデガなら、ワイングラスより気楽にワインを楽しめる気がするのは私だけでしょうか。


そして、パンと共に出てくるバターは、バスク地方エスペレット産の唐辛子(写真右)入り。エスペレット産の唐辛子は日本のものより甘めで、意外とどんな料理にも合うすぐれものです。


さて、お料理をいただきましょう。こちらは、「アショア」(16ユーロ)。フランスバスクの伝統的メニューのひとつで、牛ミンチ、トマト、ピーマン、玉ねぎなどをじっくり煮たものです。お米かじゃがいもを合わせて食べるのが定番なのだそう。この日は、お米がついてきました。お米をカラフルに彩っているのは、フランスバスク、エスペレット産の赤唐辛子!対して、アショアの上にのっている青唐辛子は、スペインバスクの名物です。優しくてどこか懐かしい味のするアショアは、日本人にも食べやすい一皿。


もう一品は、赤パプリカのツナファルシ(15ユーロ)。スペインバスクの特産品であるツナをふんだんに使ったファルシは、口の中に広がる濃厚なツナのだしとパプリカの自然の甘みの組み合わせが最高。太陽の恵みをたっぷり受けたトマトのソースとの相性も抜群です。


ここで少し、バスクの食材を見てみることにしましょう。フランスバスクの代表的食材は、赤唐辛子、フォアグラ、さくらんぼ。そして、塩もおいしいと言われています。おいしい塩を使ったバイヨンヌの生ハム、17世紀初めにフランスに初めて伝わった歴史あるバイヨンヌのチョコレートも絶品。


そして、スペインバスクの代表的なものは、ツナ、アンチョビ、イカ、青唐辛子、白ワイン、ポルチーニ茸、白アスパラガスなど。特にツナやアンチョビなど、海のものはヨーロッパの中でも飛びぬけておいしいと定評があります。こちらのカフェで使われているツナも、もちろんバスク産のもの。


実は、バスクは25以上ものミシュラン星つきレストランが集まる美食エリア。なぜなのでしょうか。その理由として考えられているのは、まず、さきほどご紹介したとおりの豊富な食材。広大な山と豊かな海に恵まれたこの地方では、みずみずしい山と海の幸が手に入るということ。もうひとつは、航海技術が発達したバスクは、昔から世界各国との交流がさかんで、さまざまな情報が入ってくる場所だったということ。地元ならではの食材と世界中からのあらゆる情報、そしてバスクの人々の知恵と努力が、バスクの美食エリアをつくりあげたのです。


Café Toloを元気いっぱい切り盛りするのは、バスク出身のアンヌ・マリーさん(右)。パリっ子にはバカンスの行き先として人気のあるバスク地方ですが、「パリでも気軽にバスクに親しんでもらいたくて」と、約2年半前にカフェをオープン。気さくなバスクのお母さんは、オープン以来、なじみのお客さんを増やし続けています。パリで気軽なバスク料理を味わいたくなったら、皆さんもぜひどうぞ。


★Café Tolo(カフェ トロ)

3, rue Eugène Varlin

75010 Paris

Tél : 01 42 05 22 51

営業時間 : 火~土12 :00~23 :30、日11 :00~18 :00

定休日 : 月

最寄メトロ : 7号線Château Landon


文: 内田ちはる

写真: 新村真理