ウィーンのカフェ ― カフェ・ツェントラール


カフェの正面入口はヘレンガッセとシュトラウフガッセの角にあります

もしウィーン滞在中にどこか一軒カフェハウスに寄ってみたいという方がいらっしゃれば、まずこのカフェ・ツェントラールをお勧めするでしょう。ウィーンに数あるカフェハウスにはそれぞれ独自の雰囲気がありますが、ここはウィーンが培ってきたカフェ文化と19世紀末ベル・エポックの雰囲気にあふれた、最も印象的なカフェといえます。

中心部からやや奥まっていますが、コールマルクトから王宮のミヒャエル門の手前で右に曲がると、2、3分先にこのカフェのあるパレ・フェルステルが見えます。ここでカフェ・ツェントラールが最初に営業を始めたのは1870年。当時はシュニッツラー、ホフマンスタール、ムジルなど文士をはじめとして、芸術家、政治家、学者などがよく集まる、ウィーンの名高いカフェでした。ナチの時代を境にして、それら文化人の多くは命を失ったり国外へ逃亡したりしてちりぢりになり、ここも1943年に閉鎖されます。空爆による崩壊と敗戦、そして復興を経て、長い空白ののち再び蘇ったのは1982年のことです。


カフェの昔の常連、ペーター・アルテンブルク

入り口をはいるとすぐ手前の席に、立派な髭をたくわえたおじさんが陣取っています。これはカフェ・ツェントラールに集まっていた文士のひとり、ペーター・アルテンブルク。一日中このカフェに入りびたって、「住所は」と聞かれると、「カフェ・ツェントラール」と応えていたという伝説の人物。没後は人形としてとうとうこのカフェの住人になりきりました。


円柱から伸びるリブが印象的な丸天井

ここを目当てにやってくる観光客も多い

カフェのあるフロアは大理石の円柱が丸天井と融合するように立ち並び、「ゾイレンザール」(円柱のホール)と呼ばれています。円柱から続くヴォールトのリブやアーチ型の窓枠には細かい彩色がなされ、縁どられた壁と天井が印象的。ウィーン文化華やかなりし頃のノスタルジーにあふれた空間で、人々はおしゃべりをしたり、読書をしたり、おもいおもいのひとときを過ごしています。

せわしい東京なら1時間以上も喫茶店にねばっていようものなら、ていよく追い出されそうですが、ウィーンではちょっと違います。ウィーンのカフェハウスは「居間の延長」とも呼ばれて、コンセプトはそこにあります。ここは飲食するだけでなく、人と会ってよもやま話や議論をしたり、新聞や雑誌を読んだり、手紙を書いたり、ちょっとぼんやり時間をつぶしたりして、自分の家の居間のごとくくつろいでゆっくり過ごせる場所。カフェによっては、ビリヤードやダーツ、トランプ、チェスなどをおいているところもあります。


カフェ・ツェントラールでは特に多数の新聞や雑誌を取り揃えています。オーストリア国内の主要紙はもちろん、ここを訪れる客 層に合わせて、英語やフランス語などヨーロッパの主要新聞も用意されているのが特徴。カフェの中央にはベーゼンドルファーのグランドピアノが置かれ、毎日 夕方からピアノの生演奏もあります。


日刊紙を多数用意。ヨーロッパの主要な新聞ならたいていみつかります

ウィーンのメカ、ベーゼンドルファーのピアノで毎日夕方から生演奏

カフェ内は禁煙になっています

若き皇帝フランツ・ヨーゼフと皇妃エリザベトの肖像画のある食事席


そして忘れてならないのはここのケーキ。左手奥のショーケースには、コンディトライに劣らないほど多種のケーキがずらりと並んでいます。ウィーン定番のケーキはもちろん、季節のフルーツを使ったものや、この店オリジナルのケーキも多数あります。ほどよい甘さと大きさで、味は一級。どれを選んでも後悔しません。またレストランもかねていて、ウィーン料理の定番メニューはほとんど揃っています。平日朝7:30からの朝食メニューをはじめ、夜22:00までいつでも食事をすることができます。一般のレストランは、たいていランチタイムが終わると夕方まで一旦閉店しますが、ここでは外れた時間帯でも食事しそびれることはありません。


コンディトライ並みの品揃え、ケーキのショーケース


ケーキはどれを選んでもはずれがありません


パッサージュを抜けてフライウング広場からみたパレ・フェルステル

カフェのあるパレ・フェルステルは1860年に建てられた当時、国立銀行や証券取引所として使われていました。今ではどちらも他の場所へ移転しましたが、2階にも華麗な広間があり、コンサートやワルツショー、舞踏会、祝宴などに使われています。経営が同じなので、催物のケータリングはもちろんカフェ・ツェントラールが受け持っています。


両側に専門店の並ぶパレ・フェルステル内のパッサージュ

カフェでひと休みした後は、ついでにパレ・フェルステルのパッサージュも散歩してみましょう。カフェを出てから右へ建物に沿って歩けば、入口はすぐ見つかります。建物の真ん中をショッピングのパッサージュが貫いていて、時計、骨董、革製品、高級チョコレート、自然化粧品などいろいろな専門店が目を楽しませてくれます。


カフェ・ツェントラール
Café Central

住所:Ecke Herrengasse/Strauchgasse
A-1010 Wien, Austria
電話: +43-1-533 37 63-24
URL: http://www.palaisevents.at/cafecentral.html
営業時間:
月-土 7:30~22:00
日祝 10:00~22:00
ピアノ演奏: 毎日17:00~22:00


(写真・文: © Seiko Suzuki)