漁村とリゾート地の見事な共存。パラモスでの食事。



パラモス(Palamós)はバルセロナから車で120キロ程離れた所にある人口1万八千人の街です。スペイン的には村と呼ぶには大きく、街と呼ぶには余りにもこじんまりした規模。昔から漁業が有名で、小規模な街でありながらバルセロナ、タラゴナ、ビラノバ・イ・ラ・ジェルトルに次ぐ、カタルーニャ地方で4番目に水揚げ量が多い漁港を持っています。

スペインが観光大国となったのは、ユニセフの世界遺産に登録されているような数々の素晴らしい建築物よりも、太陽と海のおかげ。特に日照時間の少ない北欧の人達にとって、スペインは一番手軽に行けるパラダイスです。

スペインが観光大国として成長する際に、多くの漁村が魚よりもお金になる観光客収集に力を入れました。その結果、スペインの海岸線は全く昔の面影のない、スパーリゾート地に生まれ変わってしまいました。パラモスも押し寄せる観光地化には争えず、海岸沿いには高級ホテルやリゾートマンションが立ち並びます。それでもやはりパラモスは今も昔も漁業で生きている、数少ない街のひとつです。



この街の面白さは、あくまでも漁村としてのパラモスを維持しつつ、そんな漁村であるパラモスを観光として売り出しているところ。例えばこの街を訪れる観光客は、なかなか一般人が立ち入る事の出来ない魚市場の競りをガラス越しに見る事が出来ます。港と魚市場とツーリスト・インフォメーションが同じ敷地内にあり、一日に二回、ガイド付きでセリの見学が出来るのです。



街の港にはカメラを抱えた沢山の観光客がウロチョロしています。そんな集中力に欠ける環境の中で、街の人達は黙々と漁船の作業を続けています。特に魚の水揚げ時が人気が高く、魚を積んだ船が港に近寄ると、多くの観光客がワッと押し寄せ写真を撮りまくります。ツーリスト・インフォメーションで何時船が港に到着するのかの情報を観光客に提供しているのです。まるで映画スターのように数々のフラッシュの中で作業を続ける街の人達。とても慣れたものです。



街中にあるレストランでは地元パラモスの港から仕入れる、新鮮な魚介類を食べる事が出来ます。海岸沿いはお洒落でモダンなレストランが多く、街の中は庶民的なレストランが多いです。



地元パラモス沖で捕れる新鮮なカタクチイワシで作ったアンチョビー。魚を塩漬けにしたあと油漬けにするアンチョビーはイタリアを中心に何処の国でも食べられる、とてもポピュラーな食べ物です。でも大抵は缶詰で新鮮な手作りのアンチョビーが食べられる場所は本当に少ないです。缶詰のアンチョビーと比べて、パラモスで食べたアンチョビーは身が大きくプリプリしています。塩分も控えめで何時も食べる缶詰のように塩辛くありません。だからこそ粒胡椒がアクセントにとてもよく効いていて、今まで食べたどのアンチョビーよりも美味しかった。もうこのアンチョビーの為だけにパラモスまで旅行しても良いくらい。油は勿論エクストラバージンのオリーブオイル。お勧めの一品です。



定番のイカフライも素材が新鮮なのでまるで別の食べ物のようです。小麦粉をまぶしてオリーブオイルで揚げる、味付けは岩塩だけのシンプルな料理なのですが、シンプルだからこそ素材の味が勝負なのです。



タコと言えばスペイン北部のガリシア地方が有名です。でもパラモスのタコも負けず劣らず美味しい。茹でたジャガイモの上に茹でたタコをのせ、岩塩、オリーブオイル、香辛料のパプリカで味付けします。北部のタコに比べてパラモスのタコは身が大きいのだそう。



ムール貝はどのレストランで食べても、これでもかって程の量です。シンプルに白ワインで蒸して、レモンをかけるだけでも美味しいのですが、今回はトマトソースを使ったメヒジョーネス・ア・ラ・マリネーラ(船乗り風ムール貝)。身が大きくてほんのり甘い、極上のムール貝です。



パラモスの隠れ名物料理。アサリにミントを使ったソース、トマト、チーズをかけオーブンで焼いた一品。文句なしの美味しさです。でも初めの方のお腹が好いている時に食べないと、結構かなりずっしりした料理なので完食するのが大変です。



どの料理もバルセロナ名物とも呼べるパン・コン・トマーテと一緒に食べます。カリカリのパンにトマトをすり付け、エクストラバージンのオリーブオイルをかけます。バルセロナはパンが本当に美味しいです。スペインで美味しいパンに出会うのは大変困難ですがバルセロナは別。どこのパン屋もレベルが本当に高いです。スーパーで買わない限りハズレが余り無いのがバルセロナのパン屋です。

パラモスは漁村とリゾート地の素晴らしい共存が見られる、とてもとても稀有な街です。これと言って何も見る物が無いけれど、ゆっくりと時間を過ごし、美味しい魚介類を堪能するのに最適な街です。


取材:市川路美