安心安全な自然派ワインと食材を


ビオな食生活への関心はここフィレンツェでも確実に高まり、その流れはワイン造りにも波及しています。昨年オープンしたフィレンツェ初のオーガニックワイン専門のエノテカは体に優しいワインと食材が揃います。今回はこのエノテカを取材し、若きオーナー二人からオーガニックにこだわった理由を探ります。

◆フィレンツェ初オーガニックワイン専門のエノテカ

フィレンツェの下町、サント・スピリト教会とサンタ・マリア・デル・カルミネ教会の間にあるヴィヴァンダ(Vivanda)はイタリアをはじめ各国のオーガニックワインのみ約120銘柄が並ぶエノテカです。規格に沿って認証されたワインだけをセレクト。小さな店はオーガニック食品を使った料理と共にワインが楽しめるくつろぎの場です。


右手にずらりと並ぶワインボトルの先にはグラスワインをサービスする設備があります。セルフサービスでワインを注ぎ、店内でゆっくり味わえます。手頃な価格でワインが飲めるこのエノテカ、実はフィレンツェ近郊のワイナリーの直営店だったのです。


◆幼なじみで展開するワインビジネス

ヴィヴァンダを経営するのは幼少の頃からの友達のジュリオさん(左)とラポさん(右)。醸造学専攻のジュリオさんと農学専攻のラポさんが在学中に自らの手でオーガニックワイン造るため共同で葡萄畑を購入、ワイナリー「ダッレ・ノストレ・マーニ」(Dalle nostre mani)を立ち上げます。有機農法への転換期として定められている3年を経て、2007年にワインを初リリース。その後2010年6月にフィレンツェでエノテカをオープン。直販の利点を生かした手頃な価格で自社ワインを販売するとともに、厳選されたワインと農家から直接買い付けた野菜やのびのびと育てられた羊や山羊、牛、豚等から作られるチーズやサラミがいただけます。


◆土着品種による自然派ワイン

自社ワインはスパークリング2種類、白1種類、赤4種類の計7種類。どれもトスカーナの地に根付いた品種を有機農法で育て、自然の風味を生かして醸造したワインです。

アリアルド(Arialdo)(左)
サンジョヴェーゼ種100%の赤ワインはフルーティな優しい香りにタンニンがしっかりと感じられるバランスのとれたワイン。食事のお供にピッタリ。

ガジョ(Gagio)(中)
トレビアーノ種100%の白。ワイナリー創立時に造り始めた「アリアルド」と「ガジョ」はジュリオさんとラポさんの祖父の名前が付けられています。

トスコ・レジョ(Tosco Regio)(右)
サンジョヴェーゼ種主体にプニテッロ種をブレンド。プニテッロ種は一時忘れられた品種で20年前に再発見されました。葡萄の房の形がげんこつ(イタリア語で「プーニョ」)に似ているため付けられた名前です。ポリフェノールやアントシアニンが豊かで酸が低いのが特徴。樽熟成によるキャラメルやスパイスの香りが加わり、ゆっくりと時間をかけて味わいたいワインです。


経験を重ねながら、常に新しい試みをする二人。今年はフランスで古くから伝わるシュル・リー製法によるスパークリングワインを新たにリリース。「澱の上」を意味する通り、澱と接触することにより引き出される深みと泡が特徴です。

◆なぜオーガニック?

「50年前に環境問題を語る人がほとんどいなかったのと同様、有機農法や自然食品に関心を寄せる人は稀だった。爆発的なブームというよりも、時代の流れでゆっくりかつ確実にイタリア人の意識に定着しているように思う。」とジュリオさん。労力とコストがかかるオーガニックワイン造りは大規模生産には適していないため、小さな生産者を主体に少しずつ広がっています。もともと安心安全な食生活に関心があった二人は大学で農学や醸造学を学ぶことでどれほど人体に有害な物質や添加物を含んだものを知らずに摂取しているのかを再認識します。だからこそ人と地球に優しい有機農法で育てた葡萄を使い、自然に近い方法で醸造したワイン造りを目指すのはごく自然のことだったのです。


◆ワインと味わいたい料理。

かぼちゃのフラン ゴルゴンゾーラチーズのムースと洋梨のコンポート添え
Sformatino di zucca con mousse di gorgonsola e composta di pere

南瓜の甘みを生かしたフランに濃厚なゴルゴンゾーラとコンポートの甘辛コンビ。エノテカで使う食材は全て有機栽培です。


蒸し干鱈のグリーンハーブソース
Bocconcino di baccala’ al vapore con salsina verde alle erbe

ふっくらと蒸した干鱈は塩辛すぎず上品な味。数種類のハーブを使ったソースでいただきます。


葡萄の葉のペコリーノチーズ詰め
Foglie di vite con ripieno di pecorino

半熟成チーズを自社の葡萄畑から摘んだ葉っぱでくるんだ、有機栽培だからこそ実現した一品。溶けたチーズの甘みがでて、まるでお餅のよう。もちろん赤ワインとの相性はぴったり。


チョコレートケーキ
Tortino con cuore di cioccolata

食事の後はスイートを。ナイフを入れるとブラックチョコレートがとろーりこぼれます。バニラソースと合わせても美味しい。


◆葡萄畑からワインのサービスまで

オーガニックにこだわっているから来る人とたまたまやってくる人との割合は半々。ワイン、料理に関わらず安心安全かつ美味しくなくてはなりません。そしてコストが高くても土にかえる皿を使用するなど環境への考慮を忘れません。食事が終わった後は分別回収できるよう、わかりやすく記載されています。


ワイナリーで仕事をする傍ら、エノテカに定期的に顔を出す二人。仕事としてどちらが好きかと尋ねたところ、口を揃えて「どちらも好き。」。自然の中で独りコツコツ仕事をすることも、エノテカで人と触れ合うこともそれぞれの良さがあり、今後もそのスタイルを続けていくそうです。ジュリオさんとラポさんとそれぞれ話し、おじい様の名前をとったワインや携帯電話に保存された二人一緒の子供の頃の写真を見ていると、温かい人柄が感じ取れます。年内に手作りパスタがメインの食材店をオープンする予定があり、若き二人のビオなビジネスはどんどん成長しています。安心安全な食事は生活の基盤。今後の期待が膨らみます。


Vivanda
Via Santa Monaca, 7r
Tel.: 055 2381208
営業時間:10:30 – 15:30 18:00 – 0:00


取材、文: 奥村 香織